ご自身が住むため、もしくは賃貸や売却で利益を得るために、空き家のリノベーションを検討される方が増えています。しかし、リフォームにかかる費用や工事内容に不安を感じる方も多いでしょう。この記事では、空き家リノベーションのメリット・デメリット、費用相場、向いている方について解説します。

空き家リノベーションの現状について

2018年時点で日本の空き家は約849万戸、空き家率は13.6％に達しています。かつての日本では実家に戻って親と同居する家庭も多く見られましたが、現在は子どもたちが新たな家を持つケースが増え、空き家問題が深刻化しています。

2023年3月には空家等対策特別措置法の改正案が閣議決定され、管理が不十分な空き家は固定資産税が3〜6倍に引き上げられる可能性が出てきました。このような状況を受けて、空き家リノベーションの注目度が高まり、マイホーム取得の選択肢として認知されつつあります。

参考：総務省｜平成30年住宅・土地統計調査　調査の結果

空き家をリノベーションするメリット

老朽化して放置された空き家も、リノベーションによって快適な住まいに生まれ変わります。資産価値の向上や費用面での優位性など、空き家リノベーションには多くのメリットがあります。

新築よりも安く理想の住まいを実現

日本の住宅市場では、築年数が経つほど建物の価値が減少していく特徴があり、空き家はほとんど土地の価格だけで購入できることも珍しくありません。価格の安い空き家をリノベーションすることで、新築よりも総額費用を抑えてマイホームを手に入れられます。

また、購入価格が安いため、建物のリノベーションにしっかりと費用をかけることも可能です。理想の間取りや設備・デザイン性の高い住まいを、新築注文住宅より費用を抑えて実現できるのは大きな魅力といえます。

固定資産税の上昇リスクを回避

空き家を放置すると倒壊や火災のリスクが高まり、害獣の発生など周辺環境にも悪影響を及ぼす可能性があります。状態の悪い空き家は行政から「特定空家」と認定されると、「住宅用地に係る特例」措置が解除され、固定資産税が最大6倍まで跳ね上がります。リノベーションを行うことで、耐震性や衛生面など適切な状態を保っている空き家とみなされ、「特定空家」にも認定されにくくなるのです。

環境に優しい住まいづくりが可能

空き家を取り壊して新しい家を建てるのではなく、リノベーションによって再活用することは地球環境保護にもつながります。リノベーションでは断熱性能の向上や省エネ設備の導入も可能です。環境負荷の低減は、直接的なメリットには見えないかもしれません。しかし地球環境を守ることは、私たち全員の利益となり、次世代にとっても大きなメリットとなります。

空き家リノベーションのデメリット

空き家リノベーションには注意すべき点もあります。追加費用や構造的な制約など、事前に把握しておくべきデメリットについて説明します。

予期せぬ追加工事が必要になるケース

空き家リノベーションでは、想定外の追加工事が必要になるケースもあります。主な追加工事として、耐震補強・雨漏り補修・シロアリ対策などがあります。追加工事の例を挙げると、1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅では、耐震補強工事が必要です。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査では、耐震補強工事の平均施工金額は約189万円にのぼります。

このような追加工事は、建物の安全性や快適性に関わる重要な工事です。そのため、空き家リノベーションを検討する際は、これらの追加工事の可能性も考慮した予算計画を立てることが求められます。

参考：日本木造住宅耐震補強事業者協同組合｜木耐協調査データ　2021年3月4日発表

構造上の制約で間取りに制限が出る可能性

木造戸建ての空き家は比較的間取りの自由度が高いものの、構造によっては思い通りにリノベーションできないケースがあります。特に「通し柱」や「筋交い」といった建物の構造上重要な部材は、撤去や移動が難しいのです。

建物の構造によって理想の間取りをつくれない可能性もあり、プランニングの段階で制限がかかることもあります。建物の耐震性や安全性を確保しながら、可能な範囲での間取り変更を考えていく必要があります。

デメリットを避けるための対策ポイント

空き家リノベーションのデメリットは、適切な対策をとることで回避や軽減が可能です。建物調査や専門家への相談など、重要なポイントについて説明します。

インスペクションで建物の状態を把握

インスペクション（建物診断）は空き家の状態を正確に把握する重要な調査です。建物の耐震性や劣化状況・シロアリ被害の有無など、プロの診断によって建物の問題点を明らかにすることができます。

インスペクションの費用は5～10万円程度ですが、この診断結果をもとに具体的な工事内容を決めることができます。診断によって予想外の工事や追加費用のリスクも大幅に減らすことができるのも、大きなメリットです。特に、築年数の古い空き家や長期間放置されていた建物の場合は、インスペクションを実施することが望ましいと言えるでしょう。

早めの相談と事前調査で不安を解消

空き家のリノベーションを考えているときは、専門家に早めに相談することが重要です。特に施工実績の多い会社に相談することで、信頼性の高い見積もりを入手することができます。

見積もり前の現地調査では、建物の状態や構造的な制約を詳しくチェックします。建物の図面や過去の修繕履歴なども重要な情報です。空き家の状態を正確に把握することで、具体的なリノベーション計画を立てやすくなります。

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空き家リノベーションの費用相場

国土交通省の調査によると、空き家の構造部分以外を全面リノベーションする費用相場は500〜2500万円の範囲です。工事内容や建物の状態によって費用は大きく変動します。

最低限必要な工事の費用

基本的な工事費用の目安として、壁紙交換は1平方メートルあたり800〜1500円、床材の張り替えは1畳あたり3〜6万円となります。水回り設備の交換費用は、トイレが15〜50万円、浴室が50〜150万円、キッチン50〜150万円、洗面所が10〜50万円程です。

これらの費用は建物の状態や選択する設備によって変動します。築年数が浅く状態の良い空き家であれば、必要最小限の工事から始めることも可能です。

フルリノベーションの費用目安

国土交通省の調査によると、空き家の躯体以外の部分を全面リノベーションする費用相場は500〜2500万円となっています。特に築10年以上の一戸建ての場合は、外壁リフォームに60〜300万円、屋根リフォームに15〜260万円など、建物の外部工事も必要になることがあります。耐震補強や断熱リフォームなどの性能向上工事も含めると、工事費用は大きく変動するため、事前に確認が必要です。

参考：国土交通省｜リフォームの内容と価格について

工事内容別の具体的な価格例

空き家の状態や築年数に応じて、様々な工事が必要になります。一般的な工事の費用相場を見ていきましょう。耐震補強・改修工事は25〜150万円、断熱リフォームは1平方メートルあたり4千〜3万円が目安です。

内窓（二重窓）の設置は1箇所8〜15万円、掃き出し窓の場合は10〜30万円かかります。シロアリ対策として、駆除・予防リフォームは1平方メートルあたり1,150〜3,000円、被害箇所の補修や基礎補強には25〜100万円以上の費用がかかります。これらの工事は建物の状態によって必要性が変わるため、事前の調査が重要です。

空き家リノベーションが向いている方

実家を相続した方や、賃貸・店舗経営を考えている方など、様々な目的で空き家リノベーションが選択されています。それぞれの状況に合わせた活用方法を見ていきましょう。

相続した実家の活用を考えている方

実家を相続した方は、物件取得費用がかからないため、リノベーション工事にしっかり予算をかけることができます。物件購入費用がない分、こだわりの設備や建材を選び、理想的なマイホームを実現しやすいのです。特定空家に指定されて固定資産税が増額されるリスクも回避できます。

通勤や通学など生活条件が合えば、相続した実家のリノベーションは有力な選択肢となります。ただし相続人が複数いる場合は、リノベーション前に権利関係を整理しておくことが大切です。

広い庭付き住宅での暮らしを望む方

空き家は高度経済成長期に建てられた物件も多く、新築では手に入れにくい広い敷地を持つ物件も少なくありません。郊外の空き家なら広い庭付きの物件を見つけやすく、自然を感じながらスローライフを楽しめます。

市街地でも築年数の古い空き家なら、相場以上の広さを持つ物件に出会える可能性があります。のびのびとした子育て環境を望む方や、家庭菜園を楽しみたい方にも、空き家リノベーションはおすすめの選択肢です。

こだわりの住まいを予算内で実現したい方

空き家は物件価格が安いため、その分リノベーション工事にしっかり予算をかけることができます。好みのデザインや機能性を重視した設備選びなど、理想の住まいづくりをリーズナブルに実現できます。

特に空き家戸数の多い都市部では、コストパフォーマンスの高い物件を見つけやすいでしょう。デザイン性の高い住宅を手に入れたい方や、自分らしい暮らしにこだわりたい方にとって、空き家リノベーションは魅力的な選択肢だといえます。

賃貸や店舗として活用を考えている方

空き家は不動産投資の対象としても注目されています。リーズナブルな価格の空き家を購入し、おしゃれな賃貸住宅としてリノベーションすれば、高い利回りが期待できます。飲食店や小売店、美容院など、店舗としての活用も人気があります。空き家を店舗付き住宅にリノベーションすれば、住居と店舗を兼ね備えた物件として運用することも可能です。テナント物件と異なり自由な店舗づくりができ、毎月の家賃も発生しないため、経営面でもメリットがあります。

まとめ

空き家リノベーションは、新築より費用を抑えて理想の住まいを実現できる魅力的な選択肢です。ただし、建物の状態によって追加工事が必要になることもあり、専門家による事前調査や適切な見積もりが欠かせません。

誰に相談したらいいのかわからない…とお困りの方は、株式会社関西工務店にご相談ください。奈良県を中心に、お客様の理想の住まいづくりをサポートいたします。空き家に関する様々なお悩みやご要望に、豊富な経験でお応えいたします。

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